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2025/6/3

茶道部のススメ(3):茶道部の茶会ってどんな感じ?〜学生だからこそできる特別な体験

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こんにちは、茶人みならいです。

今回は、茶道部ならではの「茶会」についてご紹介します。

日々の稽古は、お点前の練習、水屋の動き、道具の扱いなど、地味だけど大切な積み重ね。そうした学びの集大成ともいえるのが「茶会」です。

学生のうちに、同年代の仲間と一から準備してお客さまを迎える──そんな特別な体験を振り返りながら、どんな準備をして、どんな本番を迎えたのかをお話しします。


茶会ってどんな場?

茶会とは、言ってしまえば「お客様をお迎えしてお茶をふるまう場」。

ただし、単なる飲み物提供イベントではありません。

茶室の設え(しつらえ)や掛け軸、花、お菓子の内容から、お点前の流派やテーマの統一まで、細部にわたって意味が込められています。

茶道部で行う茶会も、その精神をベースに、来てくださった方に少しでも心地よい時間を過ごしてもらえるようにと準備を進めます。


学生ならではの「準備の量」

茶道部の茶会は、学生主体で行うことが多く、その分準備も盛りだくさん。

たとえば──

  • 会場の手配(学校の和室や地域施設など)
  • 広報(ポスターやSNS)
  • 招待客への連絡や案内文作成(普段お世話になっている先生やOBOGにも招待状を送ります)
  • 道具の運搬と点検
  • 菓子の手配
  • 当日の席順・配役の決定
  • 茶会後の御礼状作成
  • などなど、

    お点前をする人だけでなく、水屋係、受付、案内係など、役割も多岐にわたります。

    1か月以上前から少しずつ準備が始まり、稽古をしながら進め前日に最終確認──色々やることはありますが、部員で分担して進めるので一人ひとりがやることはそこまで多くはないです。私は点前を担当することが多かったので、当日の道具だてやテーマ選定、稽古が大変だったことを覚えています。


    本番は緊張?それとも楽しい?

    いよいよ茶会当日。

    会場の設営が整い、お客様を迎え入れると、自然と場の空気が引き締まり、少し背筋が伸びます。

    始まってしまえば、あとは「良い席にしたい」という思いだけ。緊張はしていても、その場の流れに集中して、一つひとつ丁寧にこなしていくことに夢中になります。

    点前には常に緊張感が伴いますが、それすらも心地よい張り詰めた空気として受け止められるようになるのは、学年が上がって経験を重ねてからこそ感じられることかもしれません。

    学校茶道のお客様は、お茶の作法に馴染みのない方が多いこともあり、こちらから飲み方の手ほどきをすることもよくあります。そうしたやりとりが場を和ませ、ふっと笑顔が生まれる瞬間に、ほっとする気持ちもありました。

    もちろん、うまくいかないこともあります。お茶碗を出す順番を間違えたり、掛け軸の意味をうまく説明できなかったり。ただの説明ではなく、自分なりの解釈を持って伝える──そういった部分もまた、経験の中で育っていくものです。

    それでも、お客様から「ありがとう、美味しかったです」と笑顔で言っていただけると、不思議とすべてが報われたような気持ちになります。


    茶会を通じて得られたもの

    個人的には、茶会こそが茶道をやっていて最も心に残る時間でした。

    点前そのもの以上に、空間を整え、誰かのために心を尽くす──その一連の過程に、自分らしさや想いをにじませることができる。そう感じたのは、実際に茶会を経験してからでした。

    お茶は「総合芸術」と言われることがありますが、それを一番実感できたのは、まさにお茶会という場。お点前や設えのすべてが一つのテーマにまとまり、表現として機能する。その場づくりこそが、自分にとっての醍醐味でした。(もちろん、その土台には日々の稽古があります)

    社会人になってからお茶を続けていても、自分で茶会を開くという経験はそう簡単には得られません。たいていは先生の茶会のお手伝いにまわることが多く、全体を自分で企画し、責任をもって運営する機会は限られています。

    だからこそ、学生のうちに茶会をまるごと経験できたこと──これは学校茶道ならではの、大きな学びと財産だったと感じています。

    内輪でのお茶会もあります。

    対外的な大きなお茶会だけでなく、部内で行うお茶会もあります。たとえば、新入生歓迎会やクリスマスなど季節のイベントに合わせたもの、卒業する先輩に向けた感謝の会、あるいは「ただみんなでお菓子を食べながら楽しくお茶を飲もう」という気軽な趣旨のものまで、バリエーションはさまざまです。

    これらは正式な設えや点前を求められることは少なく、服装も私服だったり、和菓子の代わりに焼き菓子を出したりと、自由な雰囲気のなかで行われます。それでも、お茶を囲むことで自然と会話が生まれたり、先輩・後輩の距離が近づいたりと、茶道部ならではの和やかな時間が流れます。

    こうした「気軽なお茶会」も、日々の稽古や本番の茶会とはまた違った魅力があり、部活を続けるなかでの楽しみのひとつでした。


    まとめ:茶会は、学生だからこそできる「おもてなし体験」

    茶道部の茶会は、決して完璧な場ではありません。

    でも、手作りだからこそ伝わる気持ち、失敗しながらも一生懸命動く姿、そのすべてが来てくださった方の心に届く──そんな瞬間を体験できるのが、学生茶道部の魅力だと思います。

    とくに大きな魅力だと感じているのが、「早い段階で茶会を開催する経験ができること」。

    社会人になってからも、お茶を続けていれば来客に抹茶を点てる場面はありますが、事前にテーマを考え、設えや菓子を用意し、面識のない方に対して正式な場でお茶をふるまうという経験は、そう何度も得られるものではありません。

    学生のうちに、自分たちで準備し、悩み、工夫して、ひとつの茶会を形にする──それは、お茶を「習う」だけでは得られない、貴重な体験でした。

    もちろん、お茶を習っていれば、いずれは自分で茶会を開くこともできるようになります。ただ、準備から運営までを一通り経験するにはそれなりの時間がかかるのが一般的です。そうした経験を、まだ学びの途中にある段階で実践できるのは、学生茶道ならではの特徴でもあります。

    次回は、そんな茶道部の中で生まれる人間関係について──部活としての「リアルな側面」をお伝えします。

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